なぜお薬手帳が「命綱」なのか
「複数の病院にかかっているけれど、飲み合わせは大丈夫?」
「もしかして、薬が増えすぎている?」
このような不安を抱えている方は少なくありません。実は、薬剤師は単に薬を渡す人ではありません。最後の砦として、「この薬の組み合わせは危険ではないか」という【命を守る目】でダブルチェックを行っています。
薬剤師の重要な役割
特に「すぐに医師に確認しなければならない(疑義照会)」と判断する、見過ごせない危険なサインがあります。今回は、その中でも特に重要な3つのサインを具体的に解説し、お薬手帳の重要性を再認識していただきます。
薬剤師が即座に介入する「危険なサイン3選」
同じ効果の薬が重複している(重複投薬)
危険性
意図せず薬の量が倍になり、過剰な効果や副作用の出現リスクが大幅に高まります。例えば、同じ成分の痛み止めを2種類飲んでいる場合、肝臓や腎臓への負担が倍増し、重篤な障害を引き起こす可能性があります。
薬剤師の行動
お薬手帳の履歴から重複を特定し、「いつ」「どの病院から」出ているかを確認。医師に一元化または中止を提案します。複数の医療機関を受診している場合でも、薬剤師がしっかりと情報を統合し、安全性を確保します。
患者さんへのアドバイス
薬局で薬を受け取る際、必ず「他に飲んでいる薬」を伝えることが重要です。お薬手帳を毎回持参し、すべての薬の情報を一元管理しましょう。
服用を始めたばかりの薬と「飲み合わせの悪い薬」の組み合わせ(相互作用)
危険性
ある薬が、別の薬の効果を強めすぎたり、弱めすぎたりするリスクがあります。特に、血液を固まりにくくする薬や、特定の感染症の薬などは要注意。重篤な出血や薬効の消失につながる可能性があります。
具体例:「このAという薬と、Bという種類の薬を一緒に飲むと、体内で薬が分解されずに溜まってしまい、危険な状態になることがあります。」
薬剤師の行動
最新の処方箋と過去のお薬手帳の履歴を照合し、リスクが高い組み合わせを検知。安全な代替案を医師に提案し、患者さんの安全を最優先に考えます。専門的なデータベースを活用し、最新の相互作用情報も常にチェックしています。
患者さんへのアドバイス
新しい薬を処方された際は、必ず現在服用中のすべての薬(市販薬やサプリメントも含む)を薬剤師に伝えましょう。些細なことでも、命を守る重要な情報になります。
腎臓や肝臓の機能低下を考慮していない薬の量(腎機能・肝機能への配慮不足)
危険性
薬の多くは腎臓や肝臓で代謝・排出されます。これらの機能が低下しているのに通常量を服用すると、薬が体外に出ず体内に蓄積し、中毒症状や重篤な副作用を引き起こします。特に高齢者や持病のある方は注意が必要です。
薬剤師の行動
検査データ(あれば)、年齢、過去の既往歴を考慮し、薬の排泄能力を推定。患者さんの機能に見合った「減量」や「変更」の必要性を医師に確認します。一人ひとりの体の状態に合わせた、きめ細やかな調整を行います。
患者さんへのアドバイス
自分の腎臓や肝臓の機能が低下している場合、薬局でその情報を共有することが非常に重要です。健康診断の結果や、医師から言われた注意事項なども、ぜひ薬剤師にお伝えください。
薬剤師はあなたの「専属セーフティマネージャー」
薬剤師はこれらのチェックを通じて、患者さんの生命の安全を確保し、不安なく治療に専念できるよう貢献しています。お薬手帳は、あなたと薬剤師をつなぐ「命綱」です。
今日からできること
- お薬手帳を必ず持参し、すべての薬局で提示する
- 複数の病院にかかっている場合は、必ずその旨を伝える
- 市販薬やサプリメントも含め、すべての服用情報を共有する
- 体調の変化や気になることがあれば、遠慮なく薬剤師に相談する